文鳥野郎の日々雑感

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イモータンジョーのデビュー作を称えよ!『マッドストーン』レビュー

2015年最高の映画といえば『マッドマックス 怒りのデスロード』であることに疑いはないッ!!というわけで、『マッドマックス 怒りのデスロード』を観てからこの半年間、一日たりともマッドマックスのことを考えない日はなかったわけです。

 

登場人物のセリフはほとんど覚え、真似することは日常茶飯事。会社のPCの壁紙をウォーボーイズにして、社長にパワポで資料説明するときにV8ポーズを目撃されてしまったり、焼肉屋で順番待ちをするときにホワイトボードに「イモータンジョー」と書いて「お次でお待ちのイモータンジョー様~」と呼ばれてみたり、秋葉原のミルクスタンドでは「Mother's milk!」と注文したり、喫茶店で水をおかわりするときは「Aqua Cola!」と注文したり、でも友人が水をおかわりしようとするときは「水に心を奪われるな!生ける屍になるぞ!」とおかわりを阻止してみたりと、もう生活のほとんどがマッドマックス一色だったと言っても過言ではない。うそです過言です。

 

ともあれ、そろそろ新しいマッドな刺激が我々映画ファンには必要なのではないかと思っていた矢先、名画二本立てで有名な「キネカ大森」さんが素敵な企画『ターボキッド』『マッドストーン』の血みどろMAD映画の上映を催していたので、正月早々いってきましたよ!

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↑初キネカ大森。こぢんまりとした佇まいながら、こだわりを感じるチョイス

 

まずは、『マッドストーン』の感想から。

マッドストーン『STONE』 74年・濠、99分

監督・脚本:サンディ・ハーバット

出演:ケン・ショーター、サンディ・ハーバット、ヒュー・キース=バーン、ヘレン・モース、ヴィンセント・ギル、ロジャー・ウォード

 公園で演説をしていた政治家が何者かに狙撃された。
現場近くで麻薬でフラフラだった"ガマ蛙"は暴走族“墓掘り軍団”のひとりだ。暗殺犯は彼に犯行を見られたと思い“墓掘り軍団”のメンバーを次々と殺し始める。殺された"倉庫屋"の葬式にはバイク軍団が大挙して隊列を組み大暴走、葬儀では"死神"による感動的なスピーチが披露され、"倉庫屋"の亡骸はタテに埋葬された。これらの連続殺人に、警察は若手刑事ストーンを“墓掘り軍団”に送り込む。ストーンはグループのリーダーである"葬式屋"の命を救った見返りにグループ入りを許された。ストーンは、一見堕落にみえながら社会の虚像を憎み、本音で生きる”墓掘り軍団”たちに親しみを覚えていく。一方、プロの殺し屋である暗殺犯は対立する暴走族"黒鷹軍団”の名をかたり、彼らをおびき寄せた。ストーンがその現場に駆けつけた時には既に2人が殺されてしまっていた。殺し屋を操る黒幕は一体誰なのか。そして“墓掘り軍団”とストーンの運命は?
最初は"ガマ蛙"役だった―!イモータン・ジョーのヒュー・キース=バーン映画デビュー作!

お気に入り度:60点

ハードロック垂れ流し度:100点

 

この映画、『マッドマックス 怒りのデスロード』のイモータンジョー先生ことヒュー・キース=バーンのデビュー作だそうで。オーストラリアでの初公開は74年だけれど、当時は日本未公開だったと。で、79年のマッドマックスのヒットを受けて(内容が似ていることから?)81年に日本公開。今回、『マッドマックス 怒りのデスロード』のヒットを受けて再び劇場公開&DVD化が実現したという経緯がある模様です。

 

予告編はこちら

www.youtube.com

 

ヒュー・キース=バーン演じるガマ蛙の属する「墓掘り軍団」、要人の暗殺を目撃されたがために「墓掘り軍団」を全滅させようとする暗殺者、それを阻止しようとする「警官ストーン」の三陣営によるバトルロワイヤル!と書くとカッコイイけど、実際の展開はかなりゆるゆると牧歌的。

  

「墓掘り軍団」は多数の男女で海岸沿いの要塞で自給自足っぽい生活をしていて、独自の文化・宗教・生活圏を形成しており、上映時間の7割くらいは彼らがハッパを吸ったりフルヌードで海岸で泳いだりするヒッピーのような生活を描くのに費やされております。おそらくこの中で「墓掘り軍団」に警官ストーンがシンパシーを強めていく姿を描きたかったのだと思うのだけど、正直、ストーンが「墓掘り軍団」に入れ込むようになる過程はちょっと描ききれていないかなという消化不良感がかなり惜しい感じがしましたな。

 

惜しい、というのは、ベトナム帰還兵がアナーキズム的に政府への不信感を露わにしているシーンなどは『ランボー』に通じる政治的メッセージを感じるし、アナーキズムと法の間で揺れる警官ストーンの姿も掘り下げて、彼らの関係がもう少し丁寧に盛り込まれていればもっと重みをもつのになあ、というところだったりします。

 

というわけで、実はそんなに『マッド』 な要素はなくて、「ストーンという名の警官がギャング集団に潜入してアウトローな戦いをする」という設定が辛うじて初代『マッドマックス』ぽいっちゃぽい感じ。ストーンは割と常識人だったので全然マッドじゃなかったですね。どちらかというと、カッコイイバイクを登場させてハードロックを流しながら無法者に暴れさせるという点は『イージーライダー』に影響を受けたのでは?という印象でした!イージーライダーよろしく、ヒュー・キース=バーン先生も非業の死を遂げますが、役の印象は薄めでありましたねえ。

 

とはいえ、冒頭のバイクスタンとが凄いとか、「墓掘り軍団」の1人1人にはあだ名がついていて「ガマ蛙(Toad)」とか「すかしっぺ(Skunk)」とか「葬儀屋(Undertaker)」とかとか、殆どがカッコ悪いとか、画面の奥で明らかに想定外っぽいバイク転倒事故を起こして頭から血を流している役者がいたり、長々と海で遊ぶシーンで最初はうまく性器が隠れるように撮影していたのに、シーンの後半では全部モロ見えになっているとかは愛すべきマヌケさでご愛嬌でしたね!

 

おすすめかっていうと微妙ですが、マッドマックスファンはやはり押さえておくべき作品でしょうね!同時上映のもう一作『ターボキッド』はまた別の機会に!

 

ではでは。