文鳥野郎の日々雑感

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皆殺し系ディストピアなファニーゲーム!『パージ』レビュー(ネタバレあり)

前からTSUTAYAに行く度に気になっていたこのジャケット。

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なかなかサイコスリラーな雰囲気が出てて気になるな−と思っていたところ、他に観たい作品もたくさんあって後回しにしていたのですが、TSUTAYAのポップの後押しもあって意を決して観てみました。

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年に12時間だけ、殺人を含む全ての犯罪行為を合法にする法律が定められたアメリカ。パージと呼ばれるその日を迎えたジェームズ・サンディン(イーサン・ホーク)は、最先端のセキュリティーシステムによって保護された自宅で妻子たちと夜を過ごすことに。だが、パージがスタートするや、ある男がジェームズの家に助けを求めてやって来る。息子がセキュリティーシステムを解除して彼を家にかくまうが、男を殺そうとする近隣住民が続々と集結。暴徒と化した彼らに囲まれたジェームズたちは反撃に挑むが……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

お気に入り度:50点

イラつく家族度:95点

2022年、経済崩壊したアメリカでは「アメリカ建国の父たち」というグループによって「年に12時間だけ殺人を含むすべての犯罪行為が合法(=パージ)」という法律が制定されていた。この法律の導入によって、抑圧された社会における「人間の欲望に対するガス抜き」が実現でき、大小日常的な犯罪がゼロになったという、『バトル・ロワイヤル』的ディストピア社会が舞台であります。

とはいっても、この「パージ」、そんな野蛮なイベントに加わりたくないという金持ちもたくさんいるわけで、そういう人たちは自宅にハイテクセキュリティシステムを張り巡らせることによって暴漢から身を守っている。すると自然とターゲットとなるのはセキュリティの外にいる無防備な弱者=ホームレスに限定されてくるのですね。イーサン・ホークはこのセキュリティシステムを販売する会社に勤務しているという設定。

犯罪者は年に1度のこの12時間を心待ちにしてウキウキしているんだろうなあ、という絵を想像するだけでも「んなわけねーだろ!」とか思っちゃうんですが、思っちゃったらダメなんでしょうねえこういう映画は。

この「パージ」という法律の設定自体が非現実的なので、観るほうとして期待するのはジャケ写のお面男がどれだけ派手な惨殺シーンを見せてくれるのかということ。セキュリティ会社に努めているイーサン・ホークが主人公となれば、「パニック・ルーム」的な仕掛け部屋VS暴徒たちのワクワクするストーリーになりそうだなーと。この惨殺アクションに振り切ってくれてればそれは満足できそうだなあと思っていたわけです。

…しかし、このバトルが恐ろしく地味!否、地味というよりも暴徒たちとのバトルがほとんど無い!

ムスコが家のセキュリティを解除してしまったことによってホームレスを家に招き入れ、それが原因でホームレスと、ホームレスを追う暴徒とも対立してしまい危機に陥るという…。家のセキュリティシステムを活かした彼らとのバトルがあるのかと思いきや、家の中に入ってきてしまった暴徒に対する防御のすべは皆無!設定を活かしきれていない感がもったいなかったですね。ムスコのキャラクタもこまっしゃくれた性格で周りをピンチに陥れてばかりでイライラさせられるし、こいつはいつバットで頭殴られるんだよ!とか終始考えておりました。

舞台設定が夜の七時から朝の七時までっていうことで、『エイリアンVSプレデター2』よろしく真夜中のバトルのため画面が暗く何やってるかよくわからないし、何か新しい戦い方があるわけでもなく、イーサン・ホークは力技と銃火器で暴徒と対抗。劇中でイーサン・ホークがホームレスを暴徒たちから守ろうとする気持ちの切り替わりも不自然だし、とにかく退屈でした…。

隔絶されたコミュニティの皮肉というか、ゲーテッド・コミュニティみたいなものに対する風刺なのかと思えばそういうわけでもなく、ただひたすら見どころの少ない作品といった印象でした。うーん、残念。

ただ、『パージ アナーキー』という続編も出ているので、本国での人気はある模様。なんとなく『ハンガー・ゲーム』『メイズランナー』的なヤングアダルト小説がウケているのと似ているのかもしれませんね。 一応続編もチェックしてみようと思います。