文鳥野郎の日々雑感

映画の感想やら音楽、ガジェットのことやら

BGMも歩く!『ザ・ウォーク』レビュー(ネタバレなし)

ちょいと立川方面に用があったのだけど、気づいたらまた来てしまった立川シネマシティ。前から楽しみにしていた『ザ・ウォーク』(3D版)を観てきましたよ。

 

www.youtube.com

 

ちょうど『ガールズアンドパンツァー』の上映時間とかぶっていたので劇場は激混み。ガルパンももう何回か鑑賞したいですね。4DXもやるみたいだし。ガルパンはいいぞ。

 

あらすじ

1974年。フランス人の大道芸人フィリップ・プティジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、誰も考えついたことのない挑戦をすることに。それはニューヨークのマンハッタンにそびえ立つ2棟構造の高層ビル、ワールド・トレード・センターの屋上と屋上の間にワイヤーロープを張って命綱なしで渡っていくというものだった。そして、ついに決行の日を迎えるフィリップ。地上110階の高さに浮いているワイヤーを、一歩、また一歩と進んでいく彼だったが……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

 

 

お気に入り度:80点

金玉縮み上がり度:100点

 

ジャンルとしてはケイパーものの一つの形態ということなのだろうけども、綱渡りに生きる糧を見出した主人公がワールトトレードセンタービルに侵入〜渡るというところまでの過程を、さまざまな協力者を得ていく様子を交えながら綴っていくスタイル。

 

一見不可能な作戦を立てて、それを完遂するまでの過程を描くというのはその他のケイパーものと一緒。ミッションインポッシブルシリーズのような超人がでてくるわけでも、ハイスペックなガジェットが出てくるわけでもないのだけど、なんとなく仲間との関係の描き方のテイストはここ最近の『ミッションインポッシブル』シリーズにとても近い。エンディングのBGMで、ラロ・シフリンの『スパイ大作戦のテーマ』のようなフレーズが流れてくるあたりも意識しているのかも、とか。

 

とにかく、本作の魅力は物語の後半の舞台となるWTCからの目もくらむような高さの表現だと思うわけですが、3Dで観ていて高所の表現が本当に恐ろしすぎて何度かタマヒュンしちゃいましたよ。(女性にはこういうタマヒュンな感じって伝わるのかしら…)

 

視覚効果がとにかく優れていて、アバター』『ゼログラビティ』と並ぶ素晴らしい3D表現の作品なんじゃないでしょうかね。立体感は抜群で、劇中で棒で落ちてくるシーンで「うわっ!」みたいな感じで避けてたお客さんがいたのは愉快でした。いっぽう、3Dで観るのもいいけど、3Dだと注目すべきポイントも誘導されてしまうので2Dでもっと細かいところまでみたくなったり。

 

さて、個人的には本作の視覚効果やストーリーはとりあえずおいておいて、BGMがとても効果的だなと思いながら観ておりましたよ。本作のBGM担当の名前をチェックせずに観に行ったのですが、タイトル画面で鳴るピアノのタッチ、「あれ!これってアラン・シルベストリでは!?」と思ったら、アラン・シルベストリが担当でした。といっても、そもそもロバート・ゼメキスとアラン・シルベストリのコンビは長いので、当然っちゃ当然なのかもですが、それでもあのピアノ感だけでアラン・シルベストリ感を出せるのがすごいなあと思ったり。

 

作品全体を通じて、ジャズが主に使われているのが象徴的というか、作品全体に漂うシャレオツな雰囲気とジャズはよく合っていたけれど、おそらく重要なのはジャズではベースが「Walk」(=ウォーキングベース)しているということではないかと思いながら観ていました。別名、お散歩ベースとも呼ばれたりもするようだけど、ジャズにおけるこの奏法ってベースがてくてく歩いているようなイメージなんですよね。

 

↓ウォーキングベースってなに?という方のための動画

www.youtube.com

 

加えて、ワルツな拍子の曲も盛り込まれていたりするなど、作品全体として人間の「足」や「ステップ」を想起させる曲調の曲が盛りだくさんだったのはおそらく意図的なんじゃないかと。

 

改めて映画って総合芸術だなあと思わせてくれた、素晴らしい作品でありました。音楽に注目して、さらに何回か2Dと3Dで観てみたいですね!

マッドマックス先輩

ガジェット通信にこんな記事を発見。

 

getnews.jp

 

スター・ウォーズは通もニワカも含めてお祭り騒ぎになっていますが、いずれにしても映画館が盛り上がるのはいいことだと思いますね!

 

ところで、スター・ウォーズに限らず、詳しかろうが詳しくなかろうが知識を押し付けてくる人は嫌われるんじゃないかと思うのだけども、かくいう私も昨年職場では『マッドマックス怒りのデスロード』の魅力を誰彼構わず力説しまくり、マッドマックス童貞/処女の後輩を何人か映画館へ連れ回して、ウォーボーイズ/ウォーガールズ化させたりしたのでマッドマックス先輩」と言われている可能性が微レ存というか大いにある。

 

マッドマックスのほうがスター・ウォーズよりとっつきづらそうだけれど、特徴をあげてみるとこういう感じだろうか。

 

マッドマックス先輩の特徴26選

1. 『マッドマックス1』が最高傑作であることを押し付けてくる
2. 『マッドマックス3』を認めない
3. 来客があると「foolish...but welcome」と言いながら歓迎する

youtu.be


4.「foolish...but welcome」はロシア語でやりたいけどできないから英語で言う
5. 北斗の拳マッドマックスを比べる
6. ティナ・ターナーのことが嫌い

www.youtube.com


7. エレベーターで上階に移動する際に「Let them up!!」と言う。
8. 北斗の拳マッドマックスを比べる
9. 『スターウォーズ』のサブタイトルが復讐合戦になっているのは許さないが、『マッドマックス怒りのデスロード』のサブタイトルのダサさは許す
10. 『マッドマックス怒りのデスロード』を駄作だと感じだが駄作であることを認めたくなくて逆に絶賛する
11. 他人がネタバレするとキレるが自分がネタバレした場合には寛容
12. とりあえず4DXは批判しておく
13. EXILEAKIRA)の演技にダメ出し
14. 他人が『マッドマックス怒りのデスロード』を絶賛していると『マッドマックス怒りのデスロード』を否定する
15. 他人が『マッドマックス怒りのデスロード』を否定していると『マッドマックス怒りのデスロード』を絶賛する
16.「ようやくマッドマックスの魅力わかった?」とか言ってくる
17. リクタスのことを話すと「あー、あいつなー、あれだからなー」と言ってくる
18.「V8達成した」って言ってるけど実際はV2
19. 基本的に実際に見た回数を2~3上乗せする
20.「もう一回見に行く」って言ってるけどもう見に行かない
21. 吹き替え版は絶対に認めない
22. 特に『マッドマックス1』は駄作だと思ってる
23. 実は『マッドマックス3』を観てない
24. 『北斗の拳』を批判してイモータンジョーを称える
25. 感想が「面白かった」「最高だった」しかない
26. 数ヶ月したら『マッドマックス』に飽きて話題にすらしない

 

私も自戒を込めて気をつけねば!

皆殺し系ディストピアなファニーゲーム!『パージ』レビュー(ネタバレあり)

前からTSUTAYAに行く度に気になっていたこのジャケット。

http://luckynow.pics/wp-content/uploads/2015/06/thepurge-e1434825882689.jpg

なかなかサイコスリラーな雰囲気が出てて気になるな−と思っていたところ、他に観たい作品もたくさんあって後回しにしていたのですが、TSUTAYAのポップの後押しもあって意を決して観てみました。

www.youtube.com

年に12時間だけ、殺人を含む全ての犯罪行為を合法にする法律が定められたアメリカ。パージと呼ばれるその日を迎えたジェームズ・サンディン(イーサン・ホーク)は、最先端のセキュリティーシステムによって保護された自宅で妻子たちと夜を過ごすことに。だが、パージがスタートするや、ある男がジェームズの家に助けを求めてやって来る。息子がセキュリティーシステムを解除して彼を家にかくまうが、男を殺そうとする近隣住民が続々と集結。暴徒と化した彼らに囲まれたジェームズたちは反撃に挑むが……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

お気に入り度:50点

イラつく家族度:95点

2022年、経済崩壊したアメリカでは「アメリカ建国の父たち」というグループによって「年に12時間だけ殺人を含むすべての犯罪行為が合法(=パージ)」という法律が制定されていた。この法律の導入によって、抑圧された社会における「人間の欲望に対するガス抜き」が実現でき、大小日常的な犯罪がゼロになったという、『バトル・ロワイヤル』的ディストピア社会が舞台であります。

とはいっても、この「パージ」、そんな野蛮なイベントに加わりたくないという金持ちもたくさんいるわけで、そういう人たちは自宅にハイテクセキュリティシステムを張り巡らせることによって暴漢から身を守っている。すると自然とターゲットとなるのはセキュリティの外にいる無防備な弱者=ホームレスに限定されてくるのですね。イーサン・ホークはこのセキュリティシステムを販売する会社に勤務しているという設定。

犯罪者は年に1度のこの12時間を心待ちにしてウキウキしているんだろうなあ、という絵を想像するだけでも「んなわけねーだろ!」とか思っちゃうんですが、思っちゃったらダメなんでしょうねえこういう映画は。

この「パージ」という法律の設定自体が非現実的なので、観るほうとして期待するのはジャケ写のお面男がどれだけ派手な惨殺シーンを見せてくれるのかということ。セキュリティ会社に努めているイーサン・ホークが主人公となれば、「パニック・ルーム」的な仕掛け部屋VS暴徒たちのワクワクするストーリーになりそうだなーと。この惨殺アクションに振り切ってくれてればそれは満足できそうだなあと思っていたわけです。

…しかし、このバトルが恐ろしく地味!否、地味というよりも暴徒たちとのバトルがほとんど無い!

ムスコが家のセキュリティを解除してしまったことによってホームレスを家に招き入れ、それが原因でホームレスと、ホームレスを追う暴徒とも対立してしまい危機に陥るという…。家のセキュリティシステムを活かした彼らとのバトルがあるのかと思いきや、家の中に入ってきてしまった暴徒に対する防御のすべは皆無!設定を活かしきれていない感がもったいなかったですね。ムスコのキャラクタもこまっしゃくれた性格で周りをピンチに陥れてばかりでイライラさせられるし、こいつはいつバットで頭殴られるんだよ!とか終始考えておりました。

舞台設定が夜の七時から朝の七時までっていうことで、『エイリアンVSプレデター2』よろしく真夜中のバトルのため画面が暗く何やってるかよくわからないし、何か新しい戦い方があるわけでもなく、イーサン・ホークは力技と銃火器で暴徒と対抗。劇中でイーサン・ホークがホームレスを暴徒たちから守ろうとする気持ちの切り替わりも不自然だし、とにかく退屈でした…。

隔絶されたコミュニティの皮肉というか、ゲーテッド・コミュニティみたいなものに対する風刺なのかと思えばそういうわけでもなく、ただひたすら見どころの少ない作品といった印象でした。うーん、残念。

ただ、『パージ アナーキー』という続編も出ているので、本国での人気はある模様。なんとなく『ハンガー・ゲーム』『メイズランナー』的なヤングアダルト小説がウケているのと似ているのかもしれませんね。 一応続編もチェックしてみようと思います。

重低音でシートが揺れる!立川流、極上爆音戦車道!『ガールズアンドパンツァー劇場版』レビュー(若干ネタバレ)

マッドマックス 怒りのデスロード』の「爆音上映」で一躍有名になった立川シネマシティ。数ある映画館の中でもここが私の一番のお気に入りである!以前は職場が近かった事もあって、週に2回くらい通っていたりしたけど最近はあまり行けてなくて寂しい限り。

正月休みもおしまいなので、翌日からの仕事に備えて爽快感のある映画を好きな劇場で観たいぞっと思い、前々から「美少女アニメマッドマックス」であるとの前評判 がある『ガールズアンドパンツァー』を観に行ってきたのだ!(公式サイトでは冒頭10分を公開しているのでチェック!)

togetter.com

今までにはここの「爆音上映」は『セッション』『マッドマックス』『ジョンウィック』『進撃の巨人』などを経験してきたのだけど、どれも目指している音が違うというか、映画によって個別に最適なチューニングしているのがよく分かり、時間と金をかけていいものを提供しようという心意気を感じられて大好き

今回も謎の「センシャラウンドファイナル」なる音響システムによって醸しだされる音を楽しみに、正月休みを利用して原作アニメも2周観て予習はバッチリ!ついでに『FURY』も観てタイガー戦車の怖さに関する予習もバッチリだ!

ちなみに、この映画館は会員(シネマシティズン)になると4日前から予約が可能になるうえ、鑑賞料もかなりお得になるので、年に2回以上観に行くのなら会員になるのが絶対におすすめ!(ちなみに、『マッドマックス 怒りのデスロード』の最終上映会の予約開始日はサーバーがダウンしてて朝3時まで粘った思い出があります

特にマッドマックス 怒りのデスロード』での爆音上映がなんといっても最高でした。オープニングでウォーボーイズたちから逃げるマックス、起動するインターセプターのエンジン!タイヤが土とこすれる音!ウォーボーイズたちのバイクの爆音!お腹にズドンと重く来る重低音は最高のアトラクションでしたね。

そんな爆音上映ですが、数々のネット上の評判もあってかガルパンも予約がいっぱい状態。今日は多くの人は仕事はじめだったと思うのだけど、関係ないくらいの混み具合でしたぞ!

f:id:claviakun:20160104211729p:plain

↑この後、上映までに満席になった模様

あらすじ。

63回戦車道全国高校生大会で頂点へ上り詰めた大洗女子学園に、平穏な日々が戻ってきた。ある日、大洗町エキシビションマッチが開催されることになり、大洗女子学園は知波単学園と混成チームとして出場し、聖グロリアーナ女学院プラウダ高校混成チームと対戦する。選手たちは戦いを通じて友情を育む中、生徒会長の角谷杏が急用で学園艦に呼び戻され……。 シネマトゥデイ(外部リンク)

お気に入り度:90点

オリジナルアニメのストーリーがなかったことになってる度:100点

カチューシャ可愛や度:95点

「茶道」「華道」と並ぶ女子の嗜みという「戦車道」の設定がぶっとびすぎてて、「これは細かいことを考えて観てはいけない作品なんだな」という認識を頭に叩き込むのが大前提!「戦車内は特殊なカーボンで覆われているから実弾が飛んできても大丈夫!」との解説が劇中でもされる。いっぽう、登場キャラクタは実弾飛び交う中みんなハッチから頭出してるので、そんなことしてたら戦車砲の衝撃波で頭が吹っ飛んじゃうということは『FURY』で予習済みナンDA!

例:ハッチから頭をだしていると f:id:claviakun:20160104211735p:plain タイガー戦車の56口径の主砲が飛んできて f:id:claviakun:20160104211740p:plain こうなるんじゃ! f:id:claviakun:20160104211746p:plain

細かいこたあどうでもいいんだよ!アクションさえ楽しめればどうでもいいんだよ!という態度で、みほたちと一緒に「パンツァーフォー!(戦車前進!)」と叫びながら臨むのが正しい鑑賞法と言えましょう。

1.アクションに振り切った判断が凄い!

ストーリーはあってないようなもので、もうそこを云々するのは野暮よ野暮野暮!b>廃校を免れるために戦車道を死ぬ気で頑張ったのに、それが全部ご破算になるとか、それはもう本作においては枝葉末節。純粋に戦車アクションとキャラ萌えだけを愉しめばよいよいよい。こっちは端からストーリーには期待していないのだ!

主要登場人物が多すぎて名前も覚えきれない(主人公陣営だけでレギュラー20名くらいいるうえ、今回も説明なしに新キャラクタが多数登場)が、それでも本作を楽しむうえでは些細なこと。

制作側もそれはわかっているようで、劇中のほぼ8割は延々と戦車戦!

残りの2割は母校が廃校になることに対して落胆したりうだうだしたりする描写で、そこはちょっと退屈でした…が、これもアクションを盛り上げるための必要最低限度の構成だったんでしょうね!

どっぷりと最高の音の中で戦車戦だけを楽しむのが正しい!特に 爆音上映ではオープニングの戦車砲が飛んでくる音だけでシートがビリビリ揺れてもう背筋ゾックゾクですよ!! 未だかつてここまで戦車を戦わせまくる映画があっただろうか、いやない!

ストーリーで評価できる部分があるとすれば、文部科学省」との対立構造を明確に描写したことによって、これからは「文部科学省」をヴィランとして続編を展開しやすくなるというところでしょうか。

2.戦車アクションと魅せるアイデアが凄い!

特にウマイなーと思ったのが、「テーマパーク」というロケーションで最終決戦を行うことによって、ともすれば平地戦になってしまう戦車戦を立体的に描いたというところ。

戦車の上を走らせて戦車をジャンプさせたり、ジェットコースターのレール上を走ったり、◯◯車を変態兵器パンジャンドラムになぞらえて戦術に利用してみたり、テーマパーク内のマカロニウェスタンな空間ではマカロニな音楽を流してみたり、和な空間では和な音楽を流してみたりという場面の転換がくるくると変わって全く飽きない。 マッドマックスというよりも、多勢に無勢感や高低差を活かした戦いという点ではどちらかというと美少女アニメ版『プライベートライアン』かなという印象をうけましたよ。鐘楼からスナイプしていたジャクソン伍長を彷彿とさせられたりね。

www.youtube.com

3.音楽が凄い!

色々とアレンジを加えられながら何度も登場するテーマ曲『戦車道行進曲!パンツァー・フォー!』は『大脱走マーチ』のような、軍歌チックで、でもそれでいてワクワクするような勇猛な曲調。これが流れてくるだけでテンション上がります。

www.youtube.com

今回はオリジナル版のED曲である『Enter Enter Mission』のピアノアレンジ版なども効果的に使われていて聴きどころ満載。作曲の浜口史郎さんという方が多数の曲を作っているのだけど、ファイナルファンタジーのオーケストラアレンジを担当されてきたようで、なるほどという感じ。

その他にも、各チームがモチーフとしている国の伝統曲や音階を使用したマーチがふんだんに盛り込まれていて気分が盛り上がる。軍歌というオドロオドロしいものから生臭さをうまく取り除いて、果敢な雰囲気と高揚感だけをうまく抽出しているのだなあと感じたしだい!

その他にも、旧帝国陸軍をモチーフとした「知波単(ちはたん)学園」という新キャラクタ軍団がブラックでいい味を出しているなど、ギャグも冴え渡っておりました。(もちろんこのネーミングは旧帝国陸軍の「チハ戦車」をモチーフとしているのでしょう。)

ただ、世間で言われている「美少女アニメマッドマックス」という評価はちょっと盛りすぎというか、マッドマックスの魅力は決してアクションやアクションのアイデアだけではなく、シンプルなストーリーの中に緻密に組み込まれた伏線やテーマ性、特撮や構成の見事さなんかもあるので、アクション部分のみを取り出して比較するのは違うだろうなあと。

そういう意味では、私にとっては「多勢に無勢感」というところで、「美少女アニメプライベート・ライアン」と解釈しようとおもいます。あ、あと『FURY』と比べる向きもアルようだけれども、アレもテーマ性といったところではかなり位相が違うので、ガルパンと比べるのは違うなとは思いましたよ。 ともあれ、ここまで濃厚なアクション映画をアニメでみれることは幸せなので、超おすすめ!パンツァー・フォー!

イモータンジョーのデビュー作を称えよ!『マッドストーン』レビュー

2015年最高の映画といえば『マッドマックス 怒りのデスロード』であることに疑いはないッ!!というわけで、『マッドマックス 怒りのデスロード』を観てからこの半年間、一日たりともマッドマックスのことを考えない日はなかったわけです。

 

登場人物のセリフはほとんど覚え、真似することは日常茶飯事。会社のPCの壁紙をウォーボーイズにして、社長にパワポで資料説明するときにV8ポーズを目撃されてしまったり、焼肉屋で順番待ちをするときにホワイトボードに「イモータンジョー」と書いて「お次でお待ちのイモータンジョー様~」と呼ばれてみたり、秋葉原のミルクスタンドでは「Mother's milk!」と注文したり、喫茶店で水をおかわりするときは「Aqua Cola!」と注文したり、でも友人が水をおかわりしようとするときは「水に心を奪われるな!生ける屍になるぞ!」とおかわりを阻止してみたりと、もう生活のほとんどがマッドマックス一色だったと言っても過言ではない。うそです過言です。

 

ともあれ、そろそろ新しいマッドな刺激が我々映画ファンには必要なのではないかと思っていた矢先、名画二本立てで有名な「キネカ大森」さんが素敵な企画『ターボキッド』『マッドストーン』の血みどろMAD映画の上映を催していたので、正月早々いってきましたよ!

f:id:claviakun:20160103212544j:plain

↑初キネカ大森。こぢんまりとした佇まいながら、こだわりを感じるチョイス

 

まずは、『マッドストーン』の感想から。

マッドストーン『STONE』 74年・濠、99分

監督・脚本:サンディ・ハーバット

出演:ケン・ショーター、サンディ・ハーバット、ヒュー・キース=バーン、ヘレン・モース、ヴィンセント・ギル、ロジャー・ウォード

 公園で演説をしていた政治家が何者かに狙撃された。
現場近くで麻薬でフラフラだった"ガマ蛙"は暴走族“墓掘り軍団”のひとりだ。暗殺犯は彼に犯行を見られたと思い“墓掘り軍団”のメンバーを次々と殺し始める。殺された"倉庫屋"の葬式にはバイク軍団が大挙して隊列を組み大暴走、葬儀では"死神"による感動的なスピーチが披露され、"倉庫屋"の亡骸はタテに埋葬された。これらの連続殺人に、警察は若手刑事ストーンを“墓掘り軍団”に送り込む。ストーンはグループのリーダーである"葬式屋"の命を救った見返りにグループ入りを許された。ストーンは、一見堕落にみえながら社会の虚像を憎み、本音で生きる”墓掘り軍団”たちに親しみを覚えていく。一方、プロの殺し屋である暗殺犯は対立する暴走族"黒鷹軍団”の名をかたり、彼らをおびき寄せた。ストーンがその現場に駆けつけた時には既に2人が殺されてしまっていた。殺し屋を操る黒幕は一体誰なのか。そして“墓掘り軍団”とストーンの運命は?
最初は"ガマ蛙"役だった―!イモータン・ジョーのヒュー・キース=バーン映画デビュー作!

お気に入り度:60点

ハードロック垂れ流し度:100点

 

この映画、『マッドマックス 怒りのデスロード』のイモータンジョー先生ことヒュー・キース=バーンのデビュー作だそうで。オーストラリアでの初公開は74年だけれど、当時は日本未公開だったと。で、79年のマッドマックスのヒットを受けて(内容が似ていることから?)81年に日本公開。今回、『マッドマックス 怒りのデスロード』のヒットを受けて再び劇場公開&DVD化が実現したという経緯がある模様です。

 

予告編はこちら

www.youtube.com

 

ヒュー・キース=バーン演じるガマ蛙の属する「墓掘り軍団」、要人の暗殺を目撃されたがために「墓掘り軍団」を全滅させようとする暗殺者、それを阻止しようとする「警官ストーン」の三陣営によるバトルロワイヤル!と書くとカッコイイけど、実際の展開はかなりゆるゆると牧歌的。

  

「墓掘り軍団」は多数の男女で海岸沿いの要塞で自給自足っぽい生活をしていて、独自の文化・宗教・生活圏を形成しており、上映時間の7割くらいは彼らがハッパを吸ったりフルヌードで海岸で泳いだりするヒッピーのような生活を描くのに費やされております。おそらくこの中で「墓掘り軍団」に警官ストーンがシンパシーを強めていく姿を描きたかったのだと思うのだけど、正直、ストーンが「墓掘り軍団」に入れ込むようになる過程はちょっと描ききれていないかなという消化不良感がかなり惜しい感じがしましたな。

 

惜しい、というのは、ベトナム帰還兵がアナーキズム的に政府への不信感を露わにしているシーンなどは『ランボー』に通じる政治的メッセージを感じるし、アナーキズムと法の間で揺れる警官ストーンの姿も掘り下げて、彼らの関係がもう少し丁寧に盛り込まれていればもっと重みをもつのになあ、というところだったりします。

 

というわけで、実はそんなに『マッド』 な要素はなくて、「ストーンという名の警官がギャング集団に潜入してアウトローな戦いをする」という設定が辛うじて初代『マッドマックス』ぽいっちゃぽい感じ。ストーンは割と常識人だったので全然マッドじゃなかったですね。どちらかというと、カッコイイバイクを登場させてハードロックを流しながら無法者に暴れさせるという点は『イージーライダー』に影響を受けたのでは?という印象でした!イージーライダーよろしく、ヒュー・キース=バーン先生も非業の死を遂げますが、役の印象は薄めでありましたねえ。

 

とはいえ、冒頭のバイクスタンとが凄いとか、「墓掘り軍団」の1人1人にはあだ名がついていて「ガマ蛙(Toad)」とか「すかしっぺ(Skunk)」とか「葬儀屋(Undertaker)」とかとか、殆どがカッコ悪いとか、画面の奥で明らかに想定外っぽいバイク転倒事故を起こして頭から血を流している役者がいたり、長々と海で遊ぶシーンで最初はうまく性器が隠れるように撮影していたのに、シーンの後半では全部モロ見えになっているとかは愛すべきマヌケさでご愛嬌でしたね!

 

おすすめかっていうと微妙ですが、マッドマックスファンはやはり押さえておくべき作品でしょうね!同時上映のもう一作『ターボキッド』はまた別の機会に!

 

ではでは。